かぜの科学―もっとも身近な病の生態

かぜの科学―もっとも身近な病の生態
ジェニファーアッカーマン,Jennifer Ackerman,鍛原多惠子

早川書房
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母親が風邪を引いたので読んでみることにしました。
最初に言っておきますが、プラシーボ効果を受ける機会をバッタバッタと撃ち伏せちゃう本なので、読むと風邪にプラシーボ効果で対抗できなくなります。

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■風邪の原因は細菌ではない。
これらの原因になるのはウイルスであることが半世紀以上前に判明している。つまり、抗菌作用は風邪にはほとんど意味を持たない。
もちろんインフルエンザもウイルスであり、風邪とインフルエンザの予防はウイルスの予防という点で共通している。
ウイルスが病状を発生させるわけではなく、免疫の暴走（花粉症と構図としては一緒）としてくしゃみ鼻水頭痛があらわれる。つまり、免疫が強い人物が風邪を引きにくいとは考えられない。

■感染経路はよくわかっていない。
風邪の感染経路はよくわかっていない。風邪ウイルスで一番ポピュラーなもの(全体の20%程度)はライノウイルスだが、こちらは空気中で長く生きながらえることができないのと対照に、インフルエンザウイルスは空気感染が確認されている。それぞれウイルスによって性質は異なる。風邪のウイルスは200種類を越え、その感染経路を一概に示すことはできない。
ただし、空気感染よりも、直接触れて感染するケースの方が多いということは言えるそうだ。

□便器とまな板
ウイルスではなく細菌の話だが、家庭の中で一番雑菌が繁殖しているのは、台所のまな板の上。一番少ないのは便座。男性よりも女性のほうが手のひらの雑菌の数は多い。

□ネコの風邪
ネコも猿だって風邪を引く。しかしネコにはネコ専用の風邪ウイルスが用意されており、人間にはうつらない（逆もまた）ただし、猿とは共有できるウイルスはいくつかあるようだ。

■鼻づまりと鼻水
鼻づまりと鼻水の実際の関係は僕の認識と異なっていた。
つまり、鼻水が増えて鼻がつまるのではなく、風邪による鼻が腫れ、鼻の穴が小さくなることも原因の双璧をなしているそうである。

もう一つ認識を改めたのは、鼻水は流れ出てくる直前までは血液だそうで、赤血球をこしとられてから流れてくるとのこと。

■風邪を引きやすくすること。
寒い格好をしているせいで風邪を引くことはほとんどない。ビタミンCが足りなくてひくこともないそうだ。湿度もエアコンなどのせいで極端に低くなっていなければ要因として除外できる。

ただし、睡眠時間と慢性的なストレスは風邪への抵抗力に明確な相関性が出ており、睡眠時間が8時間以下の人は、そうでない人よりも3倍も風邪を引きやすい。
また外向的な性格の人は内向的でない人よりも風邪を引きにくいことがわかっている。これはストレスをためやすいか否かと関連がある。つまり、僕は風邪を引きやすい。

□風邪に関する迷信が多い理由の１つ
アメリカでは風邪の研究は私企業でのみ行われており、結果として「商品」が横行しているという現実がある。いつでも正確な知識は断言を避け、曖昧な知見は勢いでコミュニケーションを断行する。ダイナミックなのは後者だ。

周知の通り、マスクも風邪の予防には役に立たない。ウイルスの拡散には効果的だが、予防に関してはほぼ無力である。ただし、空気感染ができるある種類の新型インフルエンザの流行中には必需品として良いそうだ。

■風邪の予防に一番効果的なこと
手洗いに尽きる。ちなみに世界で始めて手洗いの効果を実証した人はキチガイ扱いをされて非業の死を遂げているんだってさ。

風邪の感染経路はモノを経由する。鼻をすすった手でつり革を握った10分後に健康な誰かがそのつり革につかまったのちに鼻くそをほじくって感染する。鼻くそをほじる直前にウイルスを流水で洗い流してしまえば感染の確率は激減する。ウェットティッシュなどで拭き取っても良い。

■風邪薬
市販の風邪薬にはほとんど風邪ウイルスに対して効果がない。咳止めシロップもバファリンもウイルスを殺すことはない。
ただし、鎮痛効果やよく眠るための薬剤は効果をあげるため、医師も服用する。医師以外ではプラシーボ効果をあげる可能性があるため、それを意図した服用も考慮の内となる。

風邪の特効薬は無い。発明したらノーベル賞がもらえるというのは有名な話だが、大量のアクエリアスも加湿器も、イソジンも効果がない（これらはさかもとが信じていたもの）もちろん水や湿度が悪化を促すわけでは無いが、常識的な範囲を逸脱しても効果をあらわさないらしい。
よく休んでよく眠りながら時間の経過にまかせるしかない。
ただし、プラシーボ効果は万病に作用するため、この効果を持つものを用意するのはけして無駄では無い。