フィンランドを世界一に導いた100の社会改革

フィンランドを世界一に導いた100の社会改革


フィンランドがすごいというのはなんだかあちらこちらで聞いていて、たとえば国民全員がブロードバンドに接続する権利を憲法に盛り込んだりとか、なんだかすごいいい国夢の国なんじゃないかというイメージでした。そんな国がどうして出来たのかそれについて知れそうな書名が気になって手にとりました。


内容は「無償の給食」や「リナックス」などフィンランドを象徴する制度や法律、事柄や商品などについて各界の一人者が1テーマを2ページほどで100個紹介するというもの。トピックひとつが短くまとまっていて読みやすい。書名のとおり社会制度や法律などが多いけれども「サウナ」や「キシリトール」という項目もあったり。「どんな国なんだろう」という問いはかなりカバーしてくれます。

シムシティの攻略本で「模範都市」の項目を読んでるみたいな気分というか、RPGの説明書で世界観について書かれてるページを読んでる気分というか、知らない世界を旅してるというと少しキザですが「遠い国」過ぎていい現実逃避みたいな読書でした。


印象的だった思ったのは以下のとおり

・96%の小学生が、一ヶ月に一回は図書館で本を借りている。
・未来委員会
・世界中でもダントツで汚職が少ない。(2008年では世界6位に転落)
・首都ヘルシンキには「スラム」にあたる地域がない。
・人口は500万人
都心部に600キロにわたる自転車車線が整備されている。
・性病予防にIT技術を生かしたバーチャルセックスが検討されている
・議員の3分の1が女性
・ギャンブルはすべて公営、利益はすべて慈善事業に寄付されている
・公務員はプライドと憧れの職業としてとらえられている
・マスコミの多数分立的な競争が適正




・96%の小学生が、一ヶ月に一回は図書館で本を借りている。

図書館で本を借りるなんて女のやることだよ!とか小学生のころ思っていましたが、最近では図書館って超良いと思います。よく本を読み、知ることそれすなわち善であるという文化が根強いそうです。
結果として教育水準が世界一高い国のひとつとなり、厳しい受験戦争などは無いが、おちこぼれを防ぐ制度が有効に機能していて「格差無く高い」という状態。おそらくハイコンテキスト社会なのでしょう。「ある程度の話」がだれにでもきちんと通じる「バカが少ない」社会はうらやましいと思います。
知ることを尊ぶ文化がリナックスノキアなど情報集積産業が発達している背景にもなっているんでしょう。


・未来委員会

未来委員会なんてドラえもんに出てきそうな委員会がけっこう強い権限を持っているそうです。個人的にはこういった仕組みが国をうまくまわす原動力になっているのかなと思います。
前世紀に比べて今世紀は多極化と情報化という面で未来を予測するのが難しくなっていますが、きちんと多面的に理由付けされ論議された意見に力を持たせるのは、情報化が進んでいる社会には効率のいいやり方だと思います。そして、そういった意見が支持されて実行されるのは前述のとおりバカが少なくて道理が通るからなんでしょうかね。


・世界中でもダントツで汚職が少ない。(2008年では世界6位に転落)

基本的に人口が少ない国のほうが汚職が少なくなると言われますが、フィンランドも汚職が非常に少ない国です。汚職を広義で捕らえれば「集中した権力と資源を適正な形にして行使しない」となりますが、フィンランドは限られた資源が適正に配分されている国です。
フィンランドの政治は多人数できちんと話し合って決めることが重視されます。たとえば、いろんな国にある労使交渉ですが、これは日本では経団連と連合が行う春闘に集約されていますが、フィンランドではこれに第三者として国が介在し「三者協議」とし、両者の良い交渉を政策面でバックアップしているそうです。
また選挙制度は比例代表制が敷かれており小政党化が進み、驚異的なことにこれまでの歴史で単独与党が出たこともありません。常に連立が組まれ、法案は十分に吟味されてから発効されます。
一番「いいなぁ」と思ったのは「母親になる人」について。フィンランドでは妊娠し、これから母親になるという人におくるみの布やオムツ、ミルクビンなどの育児用具が無償で提供されるそうです。つまりこれらの製造業への公共事業であるとともにこれは出生率を上昇させる社会政策にもなっているわけです。
公共事業というと土木建築のイメージが強い(というかそれ以外ない)ですが、ロングスパンを見据えた効果的なお金の使いかたってあるものなんだなぁと感じました。



長くなったのでおしまい。

個人的には医療制度の点で、蔓延するHIVや性病についての対策として、お家芸であるIT技術を駆使したバーチャルセックスの実用化を目指しているって大学の准教授が述べてる点が一番テンション上がりましたけどね。一回いってみたいフィンランド

フィンランドを世界一に導いた100の社会改革―フィンランドのソーシャル・イノベーション
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  • 発売元: 公人の友社
  • レーベル: 公人の友社
  • スタジオ: 公人の友社
  • メーカー: 公人の友社
  • 発売日: 2008/08
  • 売上ランキング: 255758